* [トラベル日記]>[国東半島〜臼杵〜博多 旅行記]から移記したものです。
わぁ〜なんという美しい水の流れ
一般にはあまり知られていないダムだが,その芸術的な景観と巧みな機能性は知る人ぞ知る美しい堰堤だ!
ちかごろダムは評判が悪い。「自然破壊だ!税金無駄使いだ!」と,しかしこのダムの美しさは感動的ですらある。
幾何学的な形でありながら,周囲の風景と見事に調和している。コンクリートとは違って落ち着いた色調と柔らか味のある石組みだからであろうか。
一帯は名水の里として有名だが,台地に水を引くのが難しく江戸時代以来農民達が多くの用水路を造ってきたという。このダムもその一環で農民達が自らの財産を出し合ってつくりあげた,このダムの所有者は地元の土地改良区である。
ダムの畔には管理人と思われる一軒家のほかには観光施設は全く無い,アクセスも悪い(竹田市街から車で30分さらに徒歩で1km弱)。だからこそ自然に融け込んだ雰囲気が訪れる人にいろいろな意味の感動を与えてくれるのかも知れない。
ダム諸元
河川:大野川水系大野川
目的:農業灌漑
型式:重力式コンクリート(重力式割石コンクリート)
堤高:14.1m
堤頂長:87.26m
湛水面積:10 ha
総貯水容量:600,000 立方m
ダム事業者:富士緒井路土地改良区
本体施工者:株式会社溝口組
着手:1933
竣工:1938
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雪解け水を満々と湛えてオーバーフローする白水堰堤
ダムサイトの地質はダム基礎としてはもろい部類に属する阿蘇火砕流堆積物(熔結凝灰岩,未固結の火山灰・スコリヤ・ローム・砂礫など)からなる。
これを克服するために様々な工夫がされている。
流下する水流の勢いを弱めるために,石造りの表面,左岸側の階段状の施設,右岸側は地形を巧みに利用した曲線状「武者返し」風の石組みで仕上げ,左右岸に沿って流れる水が正面から流れ落ちる水を挟撃して勢いを弱めるしかけ。
美しさと機能を兼ね備えたダムである。こんなダムを考えた人間がいたということに感動すら覚える。
小型のダムながら「転波」と呼ばれる水が階段状になって落ちるさまが美しく,1999年大分県では初めて昭和の近代化遺産として国指定重要文化財となる。
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建造中の堰堤
左の写真は「白水ダム物語」より
設計・監督は小野安夫(大分県農業土木技師 平成5年91歳で死去)。昭和9年から4年半の歳月をかけ,昭和13年(1938)9月30日に竣工。人々の田畑を潤そうとする農耕への熱い思いがなければ決して完成をみなかったであろうといわれている。
ダムの両岸は漏水の心配があり土砂を全て取り除き,1.8m厚のコンクリートを打って表面に石積みをしている。
これらの石は,熔結凝灰岩の中でも硬い部分(強熔結部)が使われている。堰堤内部は直方体の切石を積み上げ,上流側に3.1m厚のコンクリートを打ち止水壁を作った。そして下流側内部にも切り石を積み上げながらモルタルを充填している。
堤体からの漏水は見られず補強工事の必要もないまま現在に至っているという。
先人の叡智と努力に感動!! |
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